思い出横丁街並み絵巻プロジェクトは、新宿西口を出て小滝橋通りを左に向かって歩いてすぐのところにある戦後の闇市を起源とする飲屋街で始めたプロジェクトです。この飲屋街の街並みを4m弱の水彩画紙に線画として描き、それを道端に出し、店の人、お客、通行人にも協力をお願いし、水彩絵の具で下絵の上に塗ってもらい仕上げたものが街並絵巻です。この絵巻は、その街に対する人々の思いを吸い上げるコミュニケーションアート作品として制作したものであるが、それだけでなく、2007年度2008年度と続けて実施しているため、移りゆく、街の記録にもなっています。
ビル化も検討されているこの思い出横丁は既に新宿の文化にもなっているため、その発展の方向性は、横丁の人だけでなく多くの人の意見を元に決められて行くべきであると考えています。しかし、通行人にインタビューをしたとしても、意見は集まるものの、それをムーブメントにしていくことは難しいでしょう。そこで、街並みそのものをこの街に埋もれるアートのタネとして下絵を制作し、街に関わる皆さんと描いて街並み絵巻を制作することにしました。
街並みのお店はのれんと深い関係にあるので、街並み絵巻を巨大なのれんにして最終的に展示しました。こうすることで、描きながら、そして、のれんの展示を見ながら、この横丁について色々語ってもらうことができるようになります。さらに、街の中からアートを生み出したというだけでなく、作られた作品である街並み絵巻を手ぬぐいなどの使えるデザイン制作物にして、それを販売し、さらにそれらを使ってもらいながら、街のことを考えてもらうことまでを想定しています。
つまり、アートとしてはじめたものがアートとして終わるのではなく、さらにそれが続いていくような仕掛けも持たせているということです。このように、町の中からアートのタネを見つけ出し、それを作品化して展示し、最後にコミュニティーをデザインするところまでのつながりそのものが街並みアートプロジェクトであるともいえます。尚、巨大なのれんとして展示した様子はhttp://www.japandesign.ne.jp/HTM/REPORT/kansei_hagaki/44/index.htmlでご覧下いただけます。
また、本サイトに掲出した絵巻データは拡大縮小しながら見ることが出来き、さらに各お店をクリックすることでお店の水彩画を、また、キャラクターの黒いシルエットをクリックすることで、このプロジェクトから生まれたキャラクターを見ることが出来ます。また、2007年度版と2008年度版比較しながら見ることで、一年間の変化を見ることが出来ます。
コミュニケーションアーティスト 笠尾敦司
コミュニケーションアーティスト 笠尾 敦司 Atsushi Kasao
ウェブカムアート、感性はがき、携帯絵かき、街並絵巻など、主に絵を介して人と人とのコミュニケーションを作り出す作品を作り続けている。
1997年第1回Toray Digital Creation Awards 優秀賞受賞以来、Synergistic ArtとCommunication Artを中心に制作活動を続ける。SIGGRAPH2002及びSIGGRAPH2003 Art Gallery入選、 2004年度及び2005年度文化庁メディア芸術祭アート部門静止画 審査委員会推薦作品、2006年及び2008年にINTERNATIONAL FESTIVAL OF ELECTRONIC ART 404(Italy)にて平面作品が展示および壁面投影される。東京工芸大学 デザイン学科准教授。
http://kasao.mailpaint.com/